全長×全幅×全高 3,710mm×1,625mm×800mm
エンジン種類 水冷4サイクル60゜V型12気筒横置DOHC
排気量 1,495cm3
最高出力 over 220HP/12,000rpm
最高速度 over 300km/h
車両重量 525kg
サスペンション(前) 上:ロッキングアーム、下:Iアーム、ラジアスアーム
サスペンション(後) 上:逆Aアーム、下:Iアーム、ダブル・ラジアスアーム
1964 /ホンダ RA271

F-1世界選手権、第6戦ドイツGPに初の国産F-1マシンとしてデビュー。(ドイツGP出場車:No.20、R.バックナム)
海外との行き来が不自由で情報も入りづらい状況下、マシーンの出来は当然の事ながら今一つであったが、京浜12連キャブから燃料噴射に換わった2戦目の高速イタリアGPでは序盤5位を走り、大きな可能性を見せた。ドライバーが無名の若手アメリカ人ロニー・バックナムだったこともあり、ヨーロッパの既成勢力は、東洋からの謎めいた挑戦者ホンダの参入に目を見張った。初年度は計3戦のみ参戦。
初の日本製F-1マシーン"ホンダRA271"は1964年8月のドイツGPでデビューした。二輪世界GPでの活躍から、いつホンダF-1が登場するかという噂はむしろヨーロッパで騒がれていた。'64年初旬の金色の試作車"RA270"を経て登場した"日の丸"カラーの"RA271"は、V型12気筒エンジンを通常の縦置きではなく横置きとしているところがユニーク。V8エンジンが多数を占める中、高回転・高出力型のV12を用いたところも、二輪経験を踏まえたホンダらしさがあった。
イラストレ−タ−柴田賢二さんの作品
1964 HONDA RA271

●RA271/主要諸元
シャシー
シャシー構造 軽合金モノコック+19mm径鋼管サブフレーム
エンジン型式名 RA271E
ギヤボックス 前進6速・後退1速(マニュアル)
サスペンション形式: 前 上: ロッキングアーム
下: Iアーム、ラジアスアーム
サスペンション形式: 後 上: 逆Aアーム、ラジアスアーム
下: Iアーム、ラジアスアーム
ブレーキ形式: 前/後 ディスク/ディスク
(英ダンロップ製)
タイヤ 前/後 600L-13/700L-13(英ダンロップ製)
ホイール ダンロップ製鋳物/センターロック
車重 525kg
ホイールベース 2,300mm
トレッド 前/後 1,300mm/1,350mm
※エンジンテスト用初代マシンとして、鋼管スペースフレーム構造のシャシー、
金色のボディカラーのRA270F(1963年暮)とは全くの別物。


エンジン
タイプ名 RA271E
形式 水冷横置きV型DOHC
Vバンク角 60度
気筒数 12
バルブ数 4/1気筒あたり
バルブ駆動 クランクシャフト中央からのギヤトレーン方式
排気量 1,495.3cc
ボア×ストローク 58.1mm×47.0mm
燃料供給装置 12連装キャブレター
(2戦目イタリアGPからは
機械式低圧燃料噴射装置に変更)
潤滑形式 ドライサンプ
クラッチ 乾式多板
エンジン配置 横置き
(上下割りの一体クランクケース・2輪方式)
最高出力 220ps以上/11,500rpm以上
※試作型初代エンジンとしてRA270E(1963年6月ごろ)が存在する。スペック
はほぼRA271Eに準ずる。またRA270EからVバンク1つ(2気筒)だけを独立
させた実験用エンジン、K005も造られた。

ホンダの記念すべき第1号マシン。モノコックシャシーなど当時の最新技術を採り入れながらも、随所にホンダらしさが盛り込まれた。エンジン搭載方法がその最たるもので、オートバイと同じ横置きレイアウト。1気筒あたりの排気量が125ccで12連装キャブレターというのも、2輪レーサーとの共通点が感じられる(もっとも12連キャブはセッティングの難しさから、すぐに機械式燃料噴射に改められた)。前後サスペンションも、アームやロッドを介してコイル/ダンパー・ユニットを車体中央に寄せる、インボード・タイプとなっている。のちに主流となるが、当時は珍しいものだった。

 本田宗一郎の理念に従い、エンジンにきわめて豪華かつ独創的な技術が用いられたのも大きな特徴。1気筒あたり4バルブのレイアウトは、当時どのエンジンメーカーも採用していない。またクランクシャフト軸受けに、高回転域で有利なニードル・ベアリングを用い、シャフトじたいも組み立て式(通常は一体式)とされた。エンジン出力はそのクランクシャフトの中央から取りだされる、センター・パワー・テイクオフ方式。エンジンレイアウト上この方式以外に手はなかったが、シャフトのねじれが減り、効率よくパワーをミッションに伝えられる利点も考えられた。これらによって得られた220psオーバーの最高出力は、ライバルたちを軽くひきはなすものだった。

 しかし、この贅を尽くした設計が、RA271の弱点でもあった。車両重量は当時の規定最低重量を75kgも上回ってしまうヘビー級。整備性の悪さもアキレス腱となった。トランスミッションケースはクランクケースと一体成型されており、どちらかを整備するにもすべて分解しなければならない。さらにインボード・サスペンションとしたことでエンジン周辺にパーツが集中、いっそう整備に手間がかかる結果を呼んだ。12連キャブも同様だったが、サーキット現場での素早いセッティングと整備は、マシンの性能と同じくらい重要な事柄であることをこのマシンで学んだホンダは、その教訓を次なるRA272に活かしていくことになる。

●エンジン形式:DOHC V12
●排気量:1,495.3cc
●ボア×ストローク:58.1×47.0mm
●最高出力:220ps/11,500rpm以上
●タイヤ前:600L-13
●タイヤ後:700L-13
●ホイールベース:2,300mm
●重量:525kg
RA271
 1964年(昭和39年)