一方ヤマハがRD56に替わり前年登場させた2ストロークV型4気筒"RD05"が十分な信頼性を獲得、ホンダとヤマハのマシンがレース毎に交互に優勝するという、稀に見る接近戦を繰り広げた。結果、マイク・ヘイルウッド/ホンダとフィル・リード/ヤマハの総獲得ポイントは同点、優勝回数の多いヘイルウッドがタイトルを辛くも死守し、RCレーサーの有終の美を飾った。
1966年歴史に残る単一メーカーによるソロ5階級制覇の偉業を成し遂げ、ホンダのファクトリー活動はピークを迎えた。この年を境に59年から始まったホンダのGPレース参戦は縮少の方向へ向い、'67年シーズンは125cc以下のクラスへの出場を休止、残る3クラスも'67年を限りに参戦を取り止めることが表明された。前年度250ccクラスの選手権を圧勝したホンダ
シックスであったが、こうした状況下では"RC166"は若干の改良が施されるにとどまり引き続き投入された。
イラストレ−タ−柴田賢二さんの作品
1967 HONDA RC166
この年、ホンダはサイドカークラスを除く世界グランプリ、ソロ全クラスへの参戦を開始。世界初の250cc6気筒レーサー"RC166"はMVアグスタから移籍したマイク・ヘイルウッドに託された。出力こそ当時直接のライバルであったヤマハの2ストロークレーサーに劣っていたものの、"RC166"はヘイルウッドの要望を全面的に反映させた非常にバランスの良いマシンに仕上がった。シーズンを通してトラブルもほとんど無く、ヘイルウッドは開幕からの8連勝を含み年間12戦中10勝をマーク、ホンダが不参加の2レースを除き、出走した全てのレースに優勝するという特筆すべき活躍を見せ、'64,'65年ヤマハに連覇されていたこのクラスの選手権の奪回に成功した。また、この年のホンダは残る4クラスにも安定した成績を残し50,125,250,350, 500cc、5階級全てのメーカータイトルを獲得、RCレーサーの最も輝ける年となった。
4ストロークレーサーの多気筒化を押し進めたホンダは、1964年モンツァのパドックに急遽、新開発の250cc6気筒RC165(3RC164)を持ち込んだ。グランプリ史上500ccクラスにはモトグッチのV型8気筒という超マルチシリンダーの前例はあったが、中排気量クラスでは過去に例のないものであっただけに、トラブルも頻発し十分な熟成期間が必要であった。この年と翌'65年はヤマハ2ストロークの後塵を排する結果に終わったが、'66年、マグネシウムやチタン等の軽金属を多用した大幅な軽量化が施され、最大の問題であった熱対策もオイルクーラーを設ける事により解決された6気筒最終型となる"RC166"が完成。
イラストレ−タ−柴田賢二さんの作品
1966 HONDA RC166
エンジン種類 |
空冷4サイクル6気筒DOHC4バルブギヤ駆動 |
排気量 |
249.42cm3 |
最高出力 |
over 60PS/18,000rpm |
最大トルク |
2.36kgm/17,000rpm |
最高速度 |
over 240km/h |
車両重量 |
114kg |
変速機 |
7段変速 |
サスペンション(前) |
テレスコピック |
サスペンション(後) |
スイングアーム |
'66年 世界選手権ロード、250ccクラス10戦全勝。メーカーズ/ライダーズ チャンピオン獲得。2年連続タイトル獲得。('67年マン島TT優勝車 No.7
M.ヘイルウッド)
1966 / ホンダ RC166
●RC166/主要諸元
乾燥重量 |
112kg |
エンジン形式 |
空冷6気筒前傾 |
カム形式/駆動 |
DOHC・ギヤトレーン |
バルブ数 |
4 |
総排気量 |
249.43cc |
ボア×ストローク |
39×34.8mm |
最高出力 |
60ps以上/18,000rpm |
最大トルク |
2.36kg-m/17,000rpm |
キャブレター形式 |
ピストン/フラットバルブ |
点火方式 |
マグネトー |
変速機 |
7段 |
潤滑方式 |
ウェットサンプ圧送併用 |
フレーム形式 |
バックボーン |
前ブレーキ |
ツインパネル2リーディングドラム |
後ブレーキ形式 |
シングルパネル2リーディングドラム |
前サスペンション形式 |
テレスコピック |
後サスペンション形式 |
スイングアーム |
前ホイール形式 |
H型アルミリム/スポーク |
後ホイール形式 |
H型アルミリム/スポーク |
前タイヤサイズ |
2.75-18 |
後タイヤサイズ |
3.25-18 |
5クラス制覇を成し遂げた1966年シーズンの250ccクラスにあって、ヘイルウッドが出場したレースすべてに優勝したこの年の終盤2戦を戦ったマシン。1961/1962年のRC162と並んで、ホンダの第一期GP挑戦における250ccクラス最高の戦闘力と戦績を誇った。翌1967年にはRC166改としてボア・ストロークを変更し、13戦中7戦に優勝。250ccクラス5回めのメーカータイトルを獲得するとともに、ヘイルウッドを2度目の250ccクラスチャンピオンに導いている。1960年の250ccクラス初挑戦時のRC161の38馬力/128kg(4気筒)に対し、60馬力/112kg(6気筒)の最高出力/車重を実現しており、その戦闘力の向上には目を見はるものがある。
●排気量:249.43cc
●気筒数:空冷6気筒前傾
●ボア×ストローク:39×34.8mm
●最高出力:60ps以上/18,000rpm
●最大トルク:2.36kg-m/17,000rpm
●最高速度:240km/h以上
●前タイヤ:2.75-18
●後タイヤ:3.25-18
●乾燥重量:112kg
RC166
1966年(昭和41年)