1966年3月第7回クラブマンレース(富士スピードウエイ)
1966年3月13日、その日の朝は早春には珍らしいほどさわやかだった。からりと晴れあがった空には雲ひとつなく,海抜900mの”フイスコ”グランドスタンドのすぐうしろには,残雪をいただいた富士が朝日に輝いていた。
8時30分,開会式。全国11支部260余クラブの中からこのレースのためにはせ参じた100余名のクラブマン。
選手代表の本田和夫(オールジャパンCP)の宣誓,国旗掲揚。そして間もなく,記念すべき”フイスコ”、初のモーターサイクルレース,全日本クラブマン・ノービス50ccクラスのウォームアップが開始された。
[主催]M.C.F.A.J.(全日本モーターサイクルクラブ連盟)
[後援]シェル石油、コカコーラ,モーターサイクリスト、富士スピードウェイ。
盛況だったノービスクラス
プログラムの午前中はノービスレース(50,90,125,250,350)にあてられた。出場者は,MCFAJの審査により,過去のロードレースでほとんど名を知られていないライダーによって占められた。この審査基準を作るにあたっては種々の問題もあったようだが,とにかく結果として,新進ライダーにとってはまたとないチャンスがあたえられることになった。
そんなことが原因となってか,出場者数もジュニアを断然圧し,また完全な自家製レーサーの性能もきわめて高度に仕上げられ,クラスによってはジュニアクラスも顔まけするようなハイレベルのレースが展開された。
ノービスクラスのレース状況 及び 詳細成績は省略する。
ノービスクラス50cc (5周 約30km) |
. |
ノービスクラス250cc (10周 約60km) |
順位.. |
氏名 |
マシン |
クラブ名 |
レースタイム |
順位.. |
氏名 |
マシン |
クラブ名 |
レースタイム |
1 |
宮口賢治 |
BS |
イエローヘルメット |
16.17.12 |
1 |
和田 勤 |
ヤマハ |
ダブルイーグル |
27.33.36 |
2 |
菅家 淳 |
スズキ |
東京ハイライト |
16.32.54 |
1 |
宮武邦裕 |
ヤマハ |
茨城レーシング |
〃 |
3 |
遠藤勝久 |
ヤマハ |
次郎長ライダース |
18.39.88 |
3 |
江崎和久 |
ホンダ |
チームボルカノ |
27.35.20 |
ノービスクラス90cc (7周 約42km) |
ノービスクラス350cc (12周 約72km) |
順位.. |
氏名 |
マシン |
クラブ名 |
レースタイム |
順位.. |
氏名 |
マシン |
クラブ名 |
レースタイム |
1 |
佐藤佳三 |
BS |
茅ヶ崎ホルコン |
21.11.43 |
1 |
ヤ−ド |
ホンダ |
ヨコタMC |
32.41.23 |
2 |
宮口賢治 |
BS |
イエローヘルメット |
21.15.21 |
2 |
滝沢良治 |
ホンダ |
静岡スポーツライダー |
33.02.99 |
3 |
鍋田正明 |
ヤマハ |
小田原ルートワン |
22.17.39 |
3 |
高橋信吾 |
ホンダ |
東京ジュニアライダース |
34.18.83 |
ノービスクラス125cc (7周 約42km) |
クラブ得点 |
順位.. |
氏名 |
マシン |
クラブ名 |
レースタイム |
順位.. |
クラブ名 |
得点 |
1 |
金井政夫 |
ヤマハ |
スポーツライダー |
20.13.65 |
1 |
イエローヘルメット |
13 |
2 |
町田竜三郎 |
ヤマハ |
ムサシノスピードライダース |
20.54.22 |
1 |
東京ジュニアライダース |
13 |
3 |
河田孔照 |
ヤマハ |
城西スポーツ |
21.30.73 |
1 |
小田原ルートワン |
13 |
. |
4 |
ムサシノスピードライダース |
10 |
4 |
茅ヶ崎ホルコン |
10 |
6 |
ニホンサイドカー |
8 |
ジュニアクラス
いろどり豊かな レーシングマシン
ノービスより出場台数こそ少なかったが,いろいろの意味で収穫が多かったのが、このジュニアクラスである。
とりわけファンの間では、1963年の第6回クラブマンレース以来その姿を見ることが出来なかった「市販レーサー」のかずかずの再登場が話題の中心。「フィスコ」という国際級の舞台を得て、一段とその高性能ぶりも冴え、ファンを堪能させた。
50ccクラス
●田中隆造(BS)、トーハツをかわす
ノービスと違って,カウリンタ装着を許されているジュニアレースは,一段と本格派らしい雰囲気が盛りあがった。スタート位置に並んだレーサーはBS,ホンダカブレーシング,トーハツ・ツイン、それにズズキ。ノービスで2位に入った菅家淳が招待選手としての出場である。
レースは菅家のノービスらしい果敢なダッシュによって始められ,2周目までトップを守ったが,激しいジュニア勢の追撃に力つき3周目ヘアピンでは一挙に4位まで後退。代ってトップになった田中降造(イエローへルメット/BS)は本田和夫(オールジャパンGP/トーハツ)と抜きつ抜かれつの接戦の末,勝利を握った。3位は同じくトーハツ・ツインの一ノ瀬一郎(オールジャパンGP)と8段変速のカブレーシングに乗る小川孝司(武蔵野インパルス)がこれまた接戦の末,小川が獲得した。健闘した菅家淳は4周目惜しくもリタイヤした。
前から、一ノ瀬一郎(4位)・小川幸司(3位)・本田和夫(2位) 優勝の田中隆造
ジュニアクラス50cc (8周 約48km) |
順位.. |
氏名 |
マシン |
クラブ名 |
レースタイム |
1 |
田中隆造 |
BS |
イエローヘルメット |
26.26.54 |
2 |
本田和夫 |
ト−ハツ |
オールジャパンGP |
26.39.93 |
3 |
小川孝司 |
ホンダ |
武蔵野インパルス |
26.55.48 |
4 |
一之瀬一郎 |
ト−ハツ |
オールジャパンGP |
26.56.03 |
5 |
神成武久 |
ホンダ |
小山ライダース |
28.38.21 |
6 |
鍋田正明 |
ホンダ |
小田原ルートワン |
. |
90ccクラス
●完走僅か3名、野口省吾(ヤマハ)楽勝
前日の公式練習時からスポーツライダー勢のヤマハAT90が速かった。このATはGPレーサーまがいの塗色をほどこしたカウリングを付けている。対するBS勢もBS色(黄と赤)に両サイドを塗り分けた90Sをくりだしたがエース滋野靖穂(イエローヘルメット)が練習中第1コーナーでマシントラブル(ミッショントラブル?)のため転倒したこともあり,結局レース出場をとりやめた。
スタートから予想通り,三室恵義,渡辺征雄のスポーツライダー組が大きくリードを奪い快走。レースは終りそうな様子であった。しかし,2周目のヘアピンで,三室が不覚の転倒、代ってトップを走った渡辺のマシンも,4周目あたりからバラツキが激しくなり6周目のヘアピンをまわったところで脱落してしまった。
このため,安定したペースで走っていた野口省吾(スポーツライター/ヤマハ)が楽勝。2位は大河辺哲雄(IEC/ホンダ)が関西から遠征してきた金谷秀夫奔犬(神戸木ノ実/カワサキ)を破り入賞した。
なお,このレースは出走7台のうち4台が転倒、マシントラブルで脱落したので,完走者全部が入賞という,おかしな結果になった。
2周目、トップの三室恵義、ヘアピンで不覚の転倒で脱落 優勝の野口省吾
ジュニアクラス90cc (10周 約60km) |
順位.. |
氏名 |
マシン |
クラブ名 |
レースタイム |
1 |
野口省吾 |
ヤマハ |
スポーツライダー |
30.30.48 |
2 |
下河辺哲雄 |
ホンダ |
IEC |
31.39.57 |
3 |
金谷秀夫 |
カワサキ |
神戸木の実 |
31.51.10 |
250ccクラス
●ヤマハTD1Bの俊速冴える
このクラスの出走車は9台。そのうちわけはヤマハTD1B、ヤマハYDS、ホンダCB,それにイタリア産成ドゥカティ”コルサ”。もちろん,TDl・Bの最新型に乗るのは三室恵義、渡辺征雄のスポーツライダー組。ドゥカティのライダーは本田和夫(オールジヤパンGP)である。
スタートは、ドゥカティが良く、ちょっとリードを奪ったがスピードの差は如何ともし難く,すぐに三室、渡辺がトップに出る。
そして彼等は,その後二度とその位置をゆずらず,他のすべての走者を周遅れにしてゴールインした。レース中ストレートにかなりの追い風であり,TD1Bの速さは実測200km/hをはるかに越えるものであった。このレースで三室がマークした2分23秒83の最高ラップは,平均速度150km/hをオーバーする本大会最高のタイムであり,本誌設定の最高スピード賞を獲得した。
優勝の三室恵義 本田和夫が乗ったDucatiは6位
ジュニアクラス250cc (15周 約90km) |
順位.. |
氏名 |
マシン |
クラブ名 |
レースタイム |
1 |
三室恵義 |
ヤマハ |
スポーツライダー |
36.50.73 |
2 |
渡辺征雄 |
ヤマハ |
スポーツライダー |
37.02.20 |
3 |
野口省吾 |
ヤマハ |
スポーツライダー |
38.22.86 |
4 |
室町 明 |
ホンダ |
ヤングライダース |
38.44.03 |
5 |
下出和久 |
ヤマハ |
茨城レーシング |
38.47.69 |
6 |
本田和夫 |
Ducati |
オールジャパンGP |
. |
125ccクラス
●トーハツ・パレード
このレースがスタートする頃は、3時もすぎ,山地特有の低い雲が,風に乗って流れウスラ寒い天候になった.このためグランドスタンドの観客の姿も次第にまばらになっていった。
レースも2台のノービス招待組を加えても6台というさびしさで盛りあがらず,スタート時の不手際もあって,ダレきったレース運びになった。しかし,久しぶりに姿を見せたトーハツ元工場レーサーに乗る,一ノ瀬一郎,本田和夫、増田武のオールジャパンGPトリオは,真剣に周回を重ね,かなりの好ラップをマークすることに成功した。
優勝の一ノ瀬一郎
ジュニアクラス125cc (12周 約72km) |
順位.. |
氏名 |
マシン |
クラブ名 |
レースタイム |
1 |
一之瀬一郎 |
ト−ハツ |
オールジャパンGP |
33.22.51 |
2 |
本田和夫 |
ト−ハツ |
オールジャパンGP |
35.09.17 |
3 |
町田竜三郎 |
ヤマハ |
ムサシノスピードライダー |
36.10.42 |
4 |
木村修三 |
ホンダ |
ニホンサイドカー |
. |
350ccクラス
●ヤード(ホンダ)再び快走
雲はいよいよ低く,雨の心配さえ出てきた午後4時すぎ、最終350ccレースがスタートした。出走者はノービスと同様ホンダが大半を占める中で、黄色いチョッキを着たクリストマンのヤマハと,赤いタンクが印象的なカワサキ650プロトタイプ(金谷秀夫)が人目をひいた。
ノービス招待のS・ヤード、滝沢良治(2位)、高橋信吾(3位)の挑戦も期待きれた。
スタートは、金谷と室町明(ヤングライダース)がちょっと遅れる。しかし、2周目に入るグランドスタンド前では、室町が先頭、そしてノービス優勝のヤード、小林彰(武蔵野インパルス)と従っている。
2周目になって、1周目の1・2・3は全く逆になり、これにやはりノービス組の滝沢が参加、4台でトップグループを形成した。3周目、滝沢は室町を抜き3位、そして大排気量にモノをいわせた金谷が5位に上がり、刻々とトップグループに迫っていった。
以後、4周目あたりで、室町のホンダはバラつきだし一挙に後退、ヤードを追う小林のマシンにも疲れがみえはじめ、追走は絶望的になった。これに反し金谷のカワサキは益々好調にピッチをあげている。彼はマシンの排気量の関係上このクラスには、いわばゲスト出場で、賞には関係ないのだが、なんとかトップを走ろうと努力を重ね、12周のヘアピンで遂に小林をとらえ、抜いた。そして更にヤードを追走し、13周目には視界の内にとらえたが、それを知ったヤードもペースを上げ、最後までその差を守りきった。
最後の走者クリストマンがゴールラインを越える頃、激しかった風はウソのようにおさまり、雲の切れ間から洩れた陽光に富士は堂々たるシルエットを見せていた。
ジュニアクラス350cc (16周 約96km) |
順位.. |
氏名 |
マシン |
クラブ名 |
レースタイム |
1 |
ヤ−ド |
ホンダ |
ヨコタMC |
42.59.36 |
2 |
小林 彰 |
ホンダ |
武蔵野インパルス |
43.29.89 |
3 |
滝沢良治 |
ホンダ |
静岡スポーツライダー |
44.05.59 |
ジュニアクラスのクラブ・チーム賞
順位.. |
クラブ名 |
得点 |
1 |
スポーツライダー |
10 |
2 |
オールジャパンGP |
7 |
3 |
イエローヘルメット |
4 |
3 |
武蔵野インパルス |
4 |
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