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モーターサイクリスト 1977年1月号

      CYCLE GUIDE誌(アメリカ)世界最初の独占試乗

                         スズキGS400

                 足がわりに毎日使える扱いやすいシティーバイクだ

またしても例によって、スズキのGS400はアメリカで世界最初の試乗がやられていた。GS750の主要部品を流用し、ギア駆動のバランサーシャフトお組み込んだこのGS400は、アメリカでは「足がわり」と見られているようだ。日本でも発売は間近だぞ!!

 スズキ自動車は2サイクル車専門に生産する最後の日本のトリデだつたが、ついに4サイクル戦争に突入してしまつた。しかも市場はすでにいいマミンで一杯になつているように思える400ccというクラスで、スズキ首脳陣は戦争を開始することにしたのだった。

 スズキが4サイクル車を作り始めたのは、‘ご存じかも知れないが、将来の排気ガス規制がすべての2サイクル車を消滅させるからではなく、そこに4サイクルの市場があるからなのだ。1980年以降に実施予定の連邦規格に適合させるには、4サイクル車より2サイクルのほうが安上がりて簡単なのだということを、スズキの技術者はいう。

 排気ガスに関するこういう不利な思わくで、客は2サイクル車から遠ざかつたのだ。時代の動きを考えて2サイクル車の巨大企業は4サイクル車を造り、その結果、2サイクル車に疑惑をいだいていた買い手は、4サイクル車を市場で多く見るにつけ、やはりそうであったかと納得する。これは悪循環なのだが、スズキもこれに参加するくことになつたのだ。

バイクはこんな具合だ

 おくればせながら、激戦の400cc 4サイクル2気筒市場にかけこんだスズキは、現在のものとはひと味違ったデザインにしたいとと思いなるべく数多くの魅力あるものを盛り込みたいと思つたものだ。そこで生れたのが、180°クランクシャフトの直立2気筒、バランサーつきのDOHCだ。

 GS400の上部はスズキのGS750と基本設計は同じであり、同一部品を多く流用している。

 この2車ともボアは65mnで、同じピストンとリング使っているが、ストロークは60mmで、GS400の方は3.6mm長く、総排気量は398.1ccであるo GS400の圧縮比は9:1にセットされている。

 ダブルオーバーヘッドカムのローフは、バルブステムの頭のカップにあるシムを押す。バルブクリアランスは厚さの違うシムを使うくことで行うが、バルブ関係はGS750と互換性がある。スズキのバルブ駆動系部品とカワサキZ−1との間には似かよったところがたくさんある。

       
                                                         チェーンテンショナー
              
        バランスシャフト                                           クラッチのラジアルローラーベアリング

 カムシャフトはクランクシャフトの真ん中で単列のチエーンを回して駆動する。カムチェーンはスズキの特許のチェーンテンショナー適正な張りにしておき、このテンショナーはシリンダーの背後にあり、調整する必要は全然ないのだ。このテンショナーはバネを入れた普通のプランジャーがカムチェーンに押しつけられたシューに圧力をかけるわけである。チエーンが伸びると、バネで押されたポールがプランジャーシャフトの後端にある斜めセット部を押し、シャフトが後方にもどるのを防ぐわけだ。

 GS400の180°クランクシャフトは4コのメーンベアリングに乗つており、その3つはボールベアリングで左端はローラーベアリングである。直列2気筒に固有の振動を消すためクランクシャフトのすぐ前にカウンターバランスシャフトを入れた。クランクシャフトのカウンターウエイトはピストンとコンロッドの往復質量のバランスををとる助けをするのだが、同時に往復部分から生じた力と直角の方向に、バランスをとりきれなかった力が生まれてくる。こ 逆回転バランスシャフトの重しは、この誘起振動をキャンセルする助けとなる。クランクの右端はひとつ山のポイントカムがあり、これが2つの点火ポイントを開閉する。クランクの左端についているのは三相のACジェネレーターとスターターの駆動だけである。

 GS400はGS750用と同じウエットサンプ潤滑方式のオイルポンプを使っているが、400の方は低い回転で駆動される。このポンプは変速機の入力側シャフト下のケース内に取り付けられ、アウタ・クラッチハブの後ろで、直歯のギアで駆動される。GS400の諸元では、最低3000rpmで43pci(3kg/cu)の油圧が要求される。

 湿式クラッチから、パワーは6速の変速機に入り、16Tの変速機スプロケットは #530のチェーンを通じて45Tもリアスプロケットを駆動する。

 エンジンはガスとエアを34mmのミクニのCV気化器2コと、オイルを滲ませて洗えるフォームラバーのエレメントを通じて吸い込む。このキャブはスターターのサーキットプランジャーをもち、これを持ち上げると、寒冷時の始動用のベンチューリに余分の燃料を送り込むわけだ。

 GS400は3.00S18というブリヂストンタイヤを止めるのに、1コのシングルアクション油圧ディスクブレーキを使い、3.50S18のリヤのほうは、ロッド式のシングルリーディングシューのドラムブレーキで止める。

 このGS400は、れまでのスズキのストリートバイクよりも、細身で現代ふうなスタイルをしていて、対応する2サイクル車のパーツと似ているものはほんとに数少ない。タンクはデカルやストライプや飾りがなく、リアフェンダーのスタイリングはスズキに面目一新の変化をつけた。シートバックもラジオとか、本の2〜3冊、ゴムひも多数を積むに十分のコンパートメントを造つている。

 日本車の大半は独立したヒューズをもった各部門別電気回路になっているが、GS400はただひとつの回路なのである。ヒューズが切れると、このバイクは電気的に死んでしまうのだ。計器板上には、ターンの表示ニュートラルハイビームの3つの警告灯がつくが、油圧の警告灯はない。スズキお家芸のL E DのギアインジケータもこのGS400に組みこまれている。

 レースをやるために、スズキも低価格のGS400XBを発売していく。XBは電気スターターがなく、デジタルギア表示がなく、フロントがディスクなくドラムブレーキとなる。価格の違いは300ドル。GS400XBの推薦小売価格は995ドルで、ここでテストするマシンGS400の値段は1295ドルである。

エンジンと変速機の具合は

 チョークを必要とする寒い朝を除いて、GS400は電気ででもキックでも、常にすぐに始動した。エンジンのレスポンスをよくするには、大抵アクセルを1回プリップするウォームアップで十分だ。

 パワーはアイドリングから8500rpmまで安定してむらなく上昇し、急激な馬力上昇もなく、フラットスポットもない。最大トルクは7500rpmで発揮し、回転数のレッドラインは9000rpmである。ライダーが1500rpmもの低い回転から、スロットルをがばっとひとひねりしてもCVタイプの気化器はエンジンに息つきをさせない。しかし、このキャブはスロットルのスライドが全開となる前にインテイクのバキュームを上げてやらなくてはならないので、低回転から最大出力が出るわけではない。だから、いくらスロットルを素早く開けても、エンジンはゆっくりとしか反応しない。

 GS400はこのタイプのバイクとしては速い。エンジンがわりかしパワフルなので、それに6速のギアが均等にうまいレシオなので、加速は目をむくものがある。0−400加速では、GS400はベストタイム15.31秒、通過速度137.3 km/hであつた。今月われわれが乗ったロードレーサーと比べれば、これは速い400クラスのスポーツマシンとはいえないが、これまでにテストした他社の4サイクル400cc車とは同等のものである。変速機は適正ななレシオ配分で、いつもエンジンをその最高RPM範囲で回させはするが、6速が必ずしも必要ではない。400のパワーバンドはうんと広いので、5速のギアを入れたところでハンディになることはないと思えるが、まあ、現在のやり方でも56 km/hで6速に入れることができる。

 初心者でもなんのトラブルもなく走り出せるほど、1速は低い。1速が低いのと、エンジンのボトムエンドのパワーが強力なので、スムースに走り出すのに長い間、必ずしも半クラッチを使う必要はない。1速が低いので静止から相当のスピードではじけとんでいくことが容易にできる。

 このクラスのほかのバイクと同様、ひとつにはCVキャブのせいで、あらゆる条件下で燃費はいい。我々が出した「最低値は」19.4km/Lで、最高は22、0km/Lであり平均で20.1km/Lであった。14Lの燃料タンクのリザーブ部分は1.5 Lを入れているので、248kmほど走って燃料コックを切り替えてから、16から24Kmのうちにガスを捜し出さなくてはならない。

 GS400の駆動系には、バランサーを組み込んだ他の2気筒車全部に見ギクシャクした感じがない。これはひとつにはスズキが1次駆動とバランサーの駆動にチェーンではなくギアを使ったためによる。それに、変速機内で噛み合うドック同士がうんと接近して配されているので、ムチ打ちみたいなものをなくしているのである。

 GS400のギアチェンジはスムースで、ストロークは短く、確実で、ニュートラルはいつでも出てくる。クラッチは軽く操作できるし、不用意に滑らずに徐々につながっていく。

ハンドリングの具合はこうだ

 GS400のトレールは94mmで、ステアリングシステムはあまり突つ立っていない28°(日本流に書くと62°)である。平均軸距は1.410mmで、空タンクで車重は175kgであり、他の400よりちょっと小太りなのだ。

 しかし、車重の45.3%が前輪にかかるので、歩く速度ででもハンドルの切れは軽い。中速のコーナーではこのバイクは内側に倒れ込む傾向があるけど、スピードが上がるにつれてステアリングはどんどん早く軽くなつてくる。ステアリングのクセをのみこめば、GS400は低速と中速のコーナーでは正確に舵取りと操作ができ、高速コーナーではいく分かこの正確さがガ欠けてくる。

 このバイクのコーナリング・クリアランスは大きく、84kgのテストライダーだけがいつもカーブでなにかを接地させていた。他のスタッフはこのコーナリング・クリアランス全部を使い切ったものはいなかった。しかもそれはタイヤのグリップは十分だつたので、タイヤガ悪くてコーナリング・クリアランスを使い残したわけではなかった。

 GS400の操作性に関して欠点となつてくる部分はサスペンションのダンピングである。前後ともスプリングはいいのだが、前後サスのダンピングはもっと改良の余地がある。前輪用ではリバウンドのダンピングが不足で、後輪用ではダンパーがほとんど働かないのである。このせいでバイクはちょっとヨタヨタし、路面の荒れたコーナーでパッセンジャーを乗せていると大幅にヨタヨタする。しかし、ステアリングは安定したままでウオッブルに至る傾向はない。フレームの剛性が高く、ダンピングに弱点はあるにしてもGS400はステアリングの安定性はすごく高いのだということを信じるようになった。

 GS400は高速の一直線走行でそうしつけのいい走り方はしない。ほんの軽い横風でも受けると、ライダーは常時こまかい修正を強いられる。

GS400のハンドリングは市中走行に一番適しているようだ。市中では混み合ったクルマを敏しようさて縫って駆け抜けるわけで、フレーム関係であまりいい印象を与えなかった高速走行はしないからだ。

乗り心地と快適さはこうだ

 GS400を片脚でまたいで最初に思うこと、そして忘れがたいのは――シートだ。われらが157cmの短脚副編集長のようなライダーでも、このバイクを扱えるほど、シート高は低いのだが、シートはとんでもなく堅いのだ。『板だけのイスみたい』というのが、あるスタッフの第一声だつた。このシートてガマンてきるのは走り出してせいぜい30kmほどで、そのあとは、尻痛剤を一服飲んだみたいで、これはすぐには忘れられないものだった。このシートに長く座つているということはせいぜいよくって、ジにさせられるってことかもしれない。

 バックミラーはエンジンの振動で適度にブレるが、振動はどの回転数においてもライダーを不快にするものではない。GS400はこれまてでわれわれがテストした4サイクル400cc2気筒の中で一番スムースなものだ。

 折りたたみのできないフートレスト、低目のハンドルとシートの相関関係て、ライディングポジションはすごくよく、ガソリンタンクの形もひざがうまく締まるようになつている。低いハンドルは普通の走行条件すべてに快適で、ハンドル幅もすべての走り方おいて安心でき操作上も十分である。

  GS400の音は他社の4サイクル350から400の2気筒よりもいささか大いので、人目をひく。しかし音量は不愉快というものではなく、われわれのテストでは83.1dBを記録した。

ブレーキの具合はこうだ

 GS400のリアブレーキは過敏て、われわれはなんとか早めにロックさせてしまった。一方フロントブレーキはよくて、いかなる形の制動をしても、すごくいい操作性と感じをもつている。前輪をロックさせるには、レバーを力ー杯引き、長い距離引かなくてはならない。このロックも急激なものでなく漸進的なものだ。急制動では大きなノーズダイブがあり、これから生じる前輪トレールの減少のため、パニックストップの制約となる。前後車輪がロック寸前になると、このバイクは安心して舵を切れなくなるので、すこしゆるめてやる必要がある。GS400最短制動距離は実測96 km/hで42.6m、実測48km/hで10.4mであった。

テスト期間中の故障のなさは

 GS400はテスト期間中、石のドアストップのように信頼性(故障のなさ)があつた。オイル漏れもオイルの焼けることもなく、1回のチェーン調整をした以外はなんの注意も必要なかった。

 このテスト車はアメリカで走つている唯一のGS400である。到着した時、タコメーターの作動ガ不安定だった。交換用のタコメーターが到着するまで、われわれは古いメーターのままで走った。しばらく走っていると、だんだんとタコは正常に働くようになり、1600km走行時に、適正に作動しはじめた。USスズキの技術者の診断によるとこの原因はタコメーターのラバーマウントのゴムが堅すぎたということで、柔らかいゴムを入れたところ、不安定な動きは完全に直った。

 スズキは2〜3の例外を除いて、そのユーザーに通常の4サイクルエンジン点検を要求する。例外とは、オートマチックテンショナーなのでカムチェーン調整の心配はないということだ。しかし、タペットはある間隔でチェックする必要があり、その調整には、厚さの異なるシムを買わなくてはならない。点火のポイントがクランクシャフトで駆動されるのでカムシャフト駆動の場合より、2倍開閉することになり、恐らくほかのものよりも点検する回数はふえるだろう。エアフィルターのエレメントは洗えるものなので新品を買う必要はない。オイルフィルターはそうはいかない。やはり新品のエレメントを買わなくてはならない。

結論が出た

 GS400はカネのかからない、扱いやすい、郊外とか市内雑用に毎日足がわりに使えるものである。400ccクラスのスポーツ車(スズキGT380、ホンダCB400F、カワサキKH400そしてヤマハRD400)の快適さ、操縦性またはパワーはもっていないが、法定速度を超えたハイキングには十分足るパワーがある。

 しかし、GS400は現在ホンダCJ360、カワサキKZ400&ヤマハXS360が占処している郊外マーケット狙ったものであり、これらのバイクはGS400同様、全部4サイクル直立2気筒である。このうちの3車をオつれわれわれはテストしたが、よく似ていた。性能も大同小異で、扱いやすくて、燃費も同じくらいで、扱い方も同じで、値段も大体同じなのだ。
 しかし、スズキにはいいところが2つある。180°クランクとバランサーウエートのため、他の2車よりもスムーズだということ。KZ400のように駆動系にギクシャクしたものがないことだ。

 現在、スズキはただひとつの欠点がある。恐ろしいシートだ。これは30分かそこらしガ乗つていられないものだが、振動がないことで、いく人かのライダーは不快なシートを差引き勘定するだろう。

 全体として、これまて乗つた郊外バイクの中ではスズキをベストと評価し、クルマの中で一番いいのはエンジンだと評価する。今年GSシリーズが4サイクル市場にスズキの名をマークしたことを考えると、このGS400の印象は倍加してくる。

(訳/本誌・橋本)


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