汎用小型ロータリーエンジン
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昔の16号と246号交差点北側に建設された東京研究所 |
1972年(昭和47年)7月12日集中豪雨で川が氾濫 |
1971年(昭和46年)に「東京研究所」が新設されて間もなく、私は浜松本社から研究所へ転勤を命じられ、「汎用の小型ロータリーエンジン」の開発を担当することになった。しかし、開発が終盤にさしかかった1974年始めに、4サイクル二輪車開発担当として浜松本社に戻ることになった。1974年7月には、「汎用の小型ロータリーエンジン」の開発完了報告もなされたが、諸事情から生産化されろことはなかった。
私のもとに、資料は殆ど無いが、あるものだけを掲載してみることとする。
上の組立図は
「減速機付の仕様」である。
開発機種記号 |
T0013(減速機なし仕様) |
T0015(減速機なし仕様) |
原動機 |
原動機型式 |
NSU/バンケル形ロータリー |
← |
ローター数 |
1 |
← |
冷却方式 |
ハウジング:強制空冷、ローター:混合気冷却 |
← |
トロコイド |
偏心量 (e) mm |
8 |
← |
創成半径 (R) mm |
53 |
← |
平行移動量 (a) mm |
0.4 |
← |
幅 (b) mm |
30 |
42 |
単室容積 cc |
66.7 |
93.2 |
圧縮比 |
8.0 |
← |
最高出力 PS/rpm |
2.9/5000 |
4.3/5000 |
定格出力 PS/rpm |
2.3/5000 |
3.5/5000 |
最大トルク kg-m/rpm |
0.44/4000 |
0.66/4000 |
全負荷における最小燃費率 g/PS-h |
370 |
350 |
機関寸法(長さ×幅×高さ) mm |
269×376×329 |
281×8×344 |
機関乾燥重量 kg (遠心クラッチ付) |
13.5 |
15.5 |
吸排気方式 |
吸気 |
サイドポート |
← |
排気 |
ペリフェラルポート |
← |
ポートタイミング |
吸気口開 |
主ポート 75°ATDC |
← |
補助ポート 60°BTDC |
← |
吸気口閉 |
主ポート 20°ABDC |
← |
補助ポート 45°ABDC |
← |
排気口開 |
69°BBDC |
← |
排気口閉 |
48°ATDC |
← |
無負荷回転数 rpm |
1700 |
1500 |
点火系 |
点火方式 |
フライホイールマグネト |
← |
点火時期 |
15° BTDC |
← |
点火プラグ |
NGK製 BP-6HS |
← |
点火プラグ位置 |
短軸よりリーディング側へ 7mm |
← |
連通孔径 mm |
6 |
8 |
燃料系 |
気化器形式 |
三国工業製アマール形BV-18 |
← |
ガス弁径 mm |
15 |
← |
ベンチュリー径 mm |
10 |
12 |
空気清浄器 |
湿式ウレタンフォーム |
← |
主吸気通路 |
ローター孔(ローター冷却) |
← |
燃料タンク容量 (L) |
4.1 |
← |
潤滑系 |
潤滑油 |
三菱ダイヤモンドスピード |
← |
混合比 |
50:1 |
← |
冷却系 |
ハウジング |
強制空冷方式(軸流ファン) |
← |
ローター |
混合気冷却方式(ローター孔) |
← |
ガバナ方式 |
ガバナ方式 |
遠心式 |
← |
始動方式 |
始動方式 |
リコイルスターター |
← |
上表の「スペック」は、
減速機なし、即ち
直結のものの仕様である
「汎用小型空冷ロータリーエンジン」の開発では、2サイクルや4サイクルエンジン開発で経験しなかった多くの問題に出会い頭を悩ましたが、次のような面白いというか、不可解な現象に遭遇したので
一つだけ紹介してみる。
全開出力性能の「のごぎり歯現象」
全開出力性能向上対策の実験を行っている際,経験したことのない不思議な現象にぶつかった。エンジン停止後数時間以上放置し、その後再始動すると,
上左図 に示すように全開出力が大幅に低下し、定常の全開出力に回復するまでに4〜6時間という長い時間を必要とする。しかもその回復は図からわかるように、丁度のこぎり歯の形状のような経過をたどって回復し,さらにこの時の最低出力は図の
A−B線が示しているように次第に上昇して行くのである。そこで,この不思議な現象を「のこぎり歯現象」と呼ぶごとにした。
この現象の原因として,いろいろな要因を考え、,それらの一つ一つに対して原因究明のための実験を行ったが,明解な回答が得られないまま、多くの対策が相乗効果を発揮したのであろうか,ごの現象の発生は大幅に改善された。
上右図 は改善後の全開出力の低下とそれが回復するまでの時間経過を示したものである。すなわち,機関を始動し,暖まった数分後の時点で全負荷運転に入ると,図からわかるように,いったん出力は急速にある出力点まで低下するが,その後急速に回復し,およそ20分くらいの時間経過で出力性能は完全に回復するようになった。
汎用小型REの発表論文
東京研究所が閉鎖されたのは1975、6年だったと思う。閉鎖に伴い、「汎用小型RE」の研究も中止となった。研究所長の長広仁蔵さんも同時に退社された。この7、8年後の、1982〜1983年にかけて、長広さんが「農業機械学会誌」に下記3つの研究論文(計47ページ)を発表した。開発担当の小生たちが作成した技術報告書をよくも長い間保存していたものだと感心したものだった。
(1)汎用空冷ロータリ機関に関する研究(第1、2、3報)
(2)
汎用空冷ロータリ機関の燃焼特性
(3)
汎用空冷ロータリ機関の冷却と耐久性(第1、2報)
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