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                              特集1959年浅間火山レース(2)

勝者は語る

「クラブマン50cc」優勝

   吉村喜光(17才,東京オトキチ)


 125ccの方に主力をおいて練習していたので、50ccの方は3位くらいにいけばよいと思っていました。奥津君、生沢君をマークしていたが,スタートがよくなかったのでしまったと思いました。レース五分前に,うんと回転をあげても大丈夫である低熱用のプラグに取りかえ,スロー回転をするとプラグがかぶってしまうので,取りかえてからエンジンをかけなかったのですが,そのためにエンジンが冷えてしまって,なかなかかゝらず3,4回キックしました。だからスタートは最後の方でした。50Rに行くまで大部抜いて,生沢君が50Rで転倒しているのを見てシメタ!と思い,インコーナーを抜いたわけです。ギヤチェンジは50Rとヘアピンでの2回だけであとはグリップを全然戻しませんでした。
 125ccの方は3位に入賞出来ましたが,これも非常に嬉しいです。これは練習中最高6分のタイムでした。練習は全部で150周くらいでしょう。練習中は12回ほど転倒しました。中でも1度は50R手前の穴に乗り入れ,30mほど飛ばされて脳震とうを起こし,1度はセンセーショナルストレイトの手前のカーブで落らて気を失いました。耐久125ccに出場しなかったのは疲労していたからです。20日の朝食で食中毒し,下痢で大部いかれていましたし。現在,東京都下,立川に在住,家の自動車修理業及びガソリンスタンドを手伝いながら,夜,昭和第1工業学較に通学しています。趣味は水泳,柔道。

「クラブマン125cc、250cc」優勝、及び「メーカー耐久125cc」優勝

   北野元(18才、関西ホンダスピード)


 3クラス優勝のうち、クラブマン250ccの優勝が最も嬉しい。メーカー耐久125ccクラス優勝は,何だかあと味がわるい気がして仕様がない。ホンダスピードにの人たちは先輩だし,顔を合わすのもちょっと具合がわるい。250ccでは野ロ,増田,足立さんなどをマークしていたが,3位内には食いこみたいと思っていた。各クラスとも一度も転倒しなかった。自分の走法はどちらかといえば、荒い走法だと自分では思っています。その証拠に練習中、125cc車で大部エンジンを焼き付かしました。僕は、こけるか、こけんか(転倒するか、転倒しないか)とことんまで走る型のライダーだと思います。
浅間を見てうまいライダーだと思ったのは伊藤史朗、高橋国光、ホンダスピードの人たち、それにサイクロンの何人か,野口種晴さんも上手だと思うけど、僕は、あんなおとなしい乗り方はあまり好きでない。田中健二郎さんのような、見ていてもスリルのあるような乗り方が好きです。僕はカーブで足を使うけど、足を使う方が何だかスリルがあるような気がするし、安定するような気がするんです。練習は一ヶ月あまりやりましたが、練習中大きな転倒は2回しました。1回は100K以上で走っていて急にブレーキがかゝって飛ばされたのです。来年は大きい車に乗ってみたい気がします。趣味は映画,水泳。

「クラブマン200cc」優勝

   桑本博之(24才,広島ベストライダース)


 このクラスは大体優勝出来ると思っていました。だから,予定通りといえば予定通りかも知れませんけど,でも,優勝出来て嬉しいです。250ccクラス第2レースで4位にとどまっただけに,何としてもこのクラスは優勝したかった。250ccではスタートでつまづいたので,このクラスはスタートに慎重を期しました。キックにして,チェンジの練習もしました。独走?えゝ,最初から飛び出してそのつもりだったのです。練習は20日あまりしましたが,練習中1度転倒しました。本番では転倒しません。

「クラブマン350cc」優勝、及び「同クラス耐久招待」優勝

   野口種晴(26才,ノムラヤマハ)


 正直いって,敵はなかった。最初飛び出して2位をうんとはなし,あとは車に無理させずペースを落して走るつもりだったんだが,その通り走った。500,501cc以上といっしょに走るだけに,それらの車のスピードに引きずられないようにして,走ったわけなんだ。だからタイムのよくないのは承知で走った。雑誌にこのクラスは僕にとっては<附録>だと書いてあったがまあ,その通りだな。1番の目標はやっぱり250ccクラスで3位まで食い込み,メーカー耐久の連中と走るということなんだ。だけど,そうはいうものの,優勝というのはいづれにしても気持ちはいゝね。耐久350cc招待レースも楽な気持ちで走った。耐久250cc招待は自分としては力いっばい走れたし,あれだけ走れば満足だ。

「クラブマン501cc以上」優勝、及び「全クラス最高スピード記録」

   吉田 治(23才、東京サイクロン)


はじめて浅間に出場してこんな勝利を得てほんとに嬉しい。練習中,1ヶ月ほど前,1度ムキになって走ってみて5分5秒で走れたので、それから自信がつき、少なくとも3位内には食い込めると思っていました。とにかく石橋さんのうしろについて行けば、なんとかなるんじゃないかと考え,彼のあとについて走った。それが彼があんな具合になってしまって僕がトップをとれたわけです。練習は150周前後でしょうが,練習中は15回くらい落ちました。ほとんど50Rばかりで転倒するんですがやはり車が大きすぎて押えが効かないんでしょう。あまり落ちるのでみんなと協議し,50Rは50cc車がまわるように車に抵抗を与えず,スムーズにまわるようにし,それ以後は落ちなくなった。しかし,最初落ちた頃は無我夢中で振り落されたが,しまいには,落ちる瞬間、車をどう倒せばよいか,自分はどちら側に落ちればいゝかわかるようになっていました。50Rと洗濯板みたいになっている6K地点が苦手だったですが,山下りからホームストレッチまでは好きなコースでした。それにしても,走り終ってオイルタンクに・サイダービン1本分くらいしかオイルが残っていなかったのにはひやりとしました。ブリーザーから洩れたらしいのです。
 全クラス最高タイムを記録したのは望外の喜びです。国際での伊藤君が出すんじゃないか,と思っていたのです。国際では,1周目小森カーブでフロントがおどり,ダンパを締めすぎていたゝめか、リアが振ってもどらず転倒してしまったのは何といっても残念でした。今まで・ハーレー1000,メグロ500などに乗っていましたが車歴は4年です。いずれにしても来年はもう少しいゝタイムで走りたいと思っています。

「国際レース」優勝

   石橋 保(23才,東京サイクロン)


 マークしていたのば伊藤史朗君。高橋国光君も強いが彼とはまあ5分5分にやれる気がしていました。501cc以上で車がこわれたので急拠親友の池田善和君のスーパーロケットのスタンダードのピストンとシリンダをかりて自分の車にとりつけた次第だったのでそう強く走れなかったのは事実です。耐久性がどこまであるかそれが恐かった,コースに馴らしていない車だし。しかし,501cc以上で敗れた分をこのレースで取りかえしたのは嬉しいです。501cc以上で車がいかれたのは回転計のつけ根のウオームギヤが飛んで,そこから排圧が洩れ,右側のエンジンにオイルがあがらなかったらしいです。ピストンに穴があいていました。練習は吉田君同様150周前後と思います。練習中は3回ほど転倒しました。練習中タイムに重きをおくときは10周くらい走り,,そうでないときは20周くらい走りました。クラブ全員で相談して自然といろんな練習法が生れていきましたが、サイクロンが優勝したのはやはり全員が強力した結果にちがいありません。

「クラブマン500cc」優勝

   高橋国光(19才,ハイスピリッツ)


 6月頃自宅や近所で走行中、犬が飛び出して避け切れず、鎖骨を折ったため,今年はあまり練習出来なかった。70周くらいじゃないかと思う。骨折も完全になおっていなかったのでその点少々不安だった。マークしていたのは全部マークしていたですよ。しかし、
まあ,うまくいけば,勝てるとは思っていました。国際では1周半まわってロッド下がいかれてしまったのです。耐久セニアでは,伊藤さんと無茶苦茶にせり合っても車もいかれるし,体も疲労するから,最後の2周でお互いに勝負を決めようということでした。伊藤さんにはやはり勝ちにくいです。最後の周で50R手前の上り坂で抜きましたが、50Rすぎのカーブで抜かれました。スピードの出しすぎで車が横にスリップし,そのすきに抜かれたのです。えゝ,あの場合転倒しなかったのは,突差のことで自分でもよく倒れなかったと思います。自分はやはり舗装コースの方が好きですが,あとしばらく大きい車でやりたいです。練習中ヤマハ125に追突して腰の肉を少しそがれたのが最も大きい事故でした。練習中,人が計ってくれたタイムですが5分ジャストが最高だったそうです。

「ベテランレース」優勝

   鈴木三郎(45才、S.R.)


 最初から優勝の予定だったのか,といわれると困るけど、まあ,順調にいけば優勝出来ると思つてはいたです。でもトライアンフが出場しているし,そう楽観は.しなかったですよ。1周ですし、やっぱり,スタートがよくなきゃあというので最初から飛び出したわけです。それにしても、5名の出場とはちょっとさみしいですよね。だけど、出場した人たちにとってはいい思い出になったと思いますね。

「旧車レース」優勝

   三友 章(23才、シエパード)


 昨年とちがって、今年は古い車が多く出てるし、そうしっかりした自信はなかったな。インデアンやノートンが出てるし、なおさらね。練習は6回来たけど、車が古いからなかなか多くまわれないし、第1簡単には調子が出てこないんだ。最後の練習は20日に来て4周スローでまわって、2周きつくまわったんだけど、車が古いからバルブがへったり、電気まわりのバランスがとれなかったりして、困った。本番では、旧車らしく、大事にして走ったです。

「耐久250cc」優勝

   島崎貞夫(24才、ホンダスピード)


 初めての優勝でほんとに嬉しい、本当に嬉しいです。僕は5尺ちょっとで背も小さいし、250には無理かもしれないんだけど今日は体もかるいような気がして、何かいけそうな予感がありましたけど、終始調子よく走れました。野口種晴くんがこのクラスに食い込んでくるであろうことは予想していましたが、彼はやはりよく走る。むろんマークしました。彼が脱落してからはペースを落とせのサインであまり無理せず走りましたし、そういいタイムは出なかったと思います。

「旧車レース、国産車の部」優勝

   小林幸夫(21才、ジャガー)


 出場車が少ないので、順調にいけば勝てると思っていました。
 途中アクセルワイヤが切れ、手で引っ張って走行しました。ワイヤが切れたのはとても困りました。フルの力で走ることは出来なかったのは当然です。しかし、ワイヤを手で引っ張って走るなんて、旧車らしい走り方であり勝ち方であったと思います。

「耐久500cc」優勝

   伊藤史朗(19才

 浅間のコースが出来て以来、初めてゴールイン出来た。
 ほんとに嬉しい。
 今まで僕は、みな、途中で車がおかしくなってしまうし、ゴールインしたことはなかったんだ。一昨日の「国際」でもあんな始末だったし、今日こそほんとに勝ちたかったんだ。作戦は高橋国光と二人でとにかく他を離して先頭に立ち、あとは車を無理させずに16周目まで二人で走ろう。あと2周で二人で勝負しようということだったんだけど、その通りに僕も高橋も走った。
 高橋がチームワークを乱さずそのように走ってくれたのもよかった。
 彼は確かによく走る。車をセーブせず、思い切り走って勝てなかったのは残念な気もするけど、とにかく、はじめてゴールインすることが出来てほんとに僕は嬉しい。
 それもBMWで優勝したことは何ともいえず嬉しい。ベンチのサイン通りに走ったが、結局それがよかったと思います。


                    
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